野球肘とはスポーツ障害の一つで、野球の投球による肘関節部の軟部組織(筋肉・靭帯など)、
軟骨の障害の事を言います。
大きく別けて
内側型、外側型、後側型、前側型に分類されます。
注意しなければならないのは、投球による肘の障害を野球肘と言うので、
野球肘と診断されたからと言って、みんな同じ症状であるとは限りません。
しっかりと診断してもらうことが重要になってきます。
上で述べたように野球肘とはさまざまなものがあります。
その中でも、特に多いもの・重要な下の4つについて述べていきます。
【内側型】 少年野球肘
使い過ぎやフォームが悪いと、前腕屈筋群(指や手首を曲げる筋肉)に強い収縮がおこり、
その緊張は上腕骨内側上顆(肘の内側の出っ張り)の軟骨に伝達され牽引力となります。
すると、最初は筋肉が付く所の炎症ですが、
進行すると成長するのに必要な軟骨の変形や軟骨が剥がれてしまったり・・・などがおこります。
これが少年野球肘です。症状は、以下のものが見られます。
・上腕骨内側上顆(肘の内側の骨の出っ張り)の圧痛・自発痛。(ズキズキした痛み)
・上腕骨内側上顆(肘の内側の出っ張り)の腫れ・熱感。
・重いものを持ったり力を入れると痛い。投げると痛い。
・肘の屈伸制限。(肘が伸びきらない・曲がりきらない)
成長期以降の軟骨がしっかりと固まった成人に起きたものは、
「内側上顆炎」(ないそくじょうかえん)と名前を変えます。
また、少年でも、軟骨などの変化までに至らなかった軽度の少年野球肘が内側上顆炎となります。
【外側型】 離断性骨軟骨炎
腕を加速していくと、投球動作による肘関節の負荷は増え、
肘の関節の外側には強い圧迫力がかかり、さらにねじれを生じさせます。
離断性骨軟骨炎はこの肘の外側の関節面を中心とした軟骨・軟骨下骨の障害です。
12才をピークに10~15才に好発します。症状は、以下のものが見られます。
・肘の外側の痛み。
・投球中、後の肘関節周辺の鈍痛。
・可動域制限。(主に伸びずらい)
・自発痛や圧痛は個人差があり、腫脹、熱感などの炎症症状は少ない。
・病巣(悪い所)が遊離し、関節内に嵌頓(はさまる)すると、激痛とともに、
運動不能(ロッキング)となります。これが「ねずみ」といわれるものです。
この外側の痛みは野球肘の中でも非常に厄介なものなので、軽視せずすぐに医療機関へ。
【前側型】 内側側副靱帯損傷
腕を加速していくと肘関節に腕が外に行こうとする力が加わり、
肘の内側の靭帯に牽引力が発生してストレスが加わり発症します。症状は、以下のものが見られます。
・肘内側の圧痛・自発痛。(押すと痛い・ズキズキする)
・肘内側の皮下出血(内出血。2~3日後に見られる時もあります)。
・屈伸制限。(曲げられない、伸ばせない)
またこの靭帯に引っ張られて骨折してしまうケースもあります。
【後方型】 肘頭骨端離解
腕の後ろにある筋肉が付く肘頭(肘の頭)に牽引力がかかり発生します。
初めは筋の付着部の炎症ですが、進行すると骨棘形成(骨にとげが出来る)や、
遊離体系成(剥離してしまい、元の場所から離れてしまう)を伴うことも少なくないようです。
症状は、以下のものが見られます。
・肘の後ろの圧痛・自発痛。(押すと痛い・ズキズキする)
・投げ終わりに痛い。
・屈伸制限。(曲げられない、伸ばせない)
日本臨床スポーツ医学会から以下のような提言がなされています。
・各チームに投手、捕手はそれぞれ2名以上育成しておく事が望ましい
・オフ期間を設け、その時期には野球以外のスポーツを行わせる
・一日に2試合の登板は避ける
学年 練習量 1日の全力投球数限度 1週間の全力投球数限度(試合を含む)
小学校 週3日以内 一日練習量は2時間以内 50球 200球
中学校 週1日以上の休養日を設ける 70球 350球
高校 週1日以上の休養日を設ける 100球 500球