これからの時期、スポーツが盛んになり増えてくる事故の中に「熱中症」があります。
スポーツに携わっている学生さんから一般の方に知っておいていただきです。
熱中症とは、暑熱環境で発生する障害の総称で、
熱失神、熱疲労(熱ひはい)、熱射病、熱けいれんに分けられます。
スポーツによる熱中症事故は、適切に予防さえすれば防げるものです。
しかしながら、予防に関する知識が十分に普及していないため、
熱中症による死亡事故が毎年発生しています。
とくにこの数年、猛暑の夏が続き熱中症の危険性も高くなっています。
熱中症事故をなくすための知識をつけることが大切です。
【病型】
〔熱失神〕
炎天下にじっと立っていたり、立ち上がったりした時、運動後などにおこります。
皮膚血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下、脳血流が減少しておこるもので、
めまいや失神(一過性 の意識消失)などの症状がみられます。
足を高くして寝かせると通常はすぐに回復します。
〔熱けいれん〕
汗には塩分も含まれています。
大量に汗をかき、水だけ(あるいは塩分の少ない水)を補給して
血液中の塩分濃度が低下したときにおこるもので、
痛みをともなう筋けいれん(こむら返りのような状態)がみられます。
下肢の筋だけでなく上肢や腹筋などにもおこります。
生理食塩水(0.9%食塩水)など濃い目の食塩水の補給や点滴により通常は回復します。
〔熱疲労〕
発汗による脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態であり、
脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状がみられます。
スポーツドリンクなどで水分と塩分を補給することにより通常は回復します。
嘔吐などにより水が飲めない場合には、点滴などの医療処置が必要です。
〔熱射病〕
過度に体温が上昇(40℃以上)して、脳機能に異常をきたし、体温調節が破綻した状態です。
種々の程度の意識障害がみられ、応答が鈍い、
言動がおかしいといった状態から進行するとこん睡状態になります。
高体温が持続すると脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発し、
死亡率 が高くなります。死の危険のある緊急事態であり、
救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げられるかにかかっています。
救急車を要請し、速やかに冷却処置を開始します。
【応急処置】
暑い時期の運動中に熱中症が疑われるような症状が見られた場合、
まず、重症な病型である熱射病かどうかを判断する必要があります。
熱射病の特徴は高体温(直腸温度40℃以上)と意識障害であり、
応答が鈍い、言動がおかしいなど少しでも意識障害がみられる場合には熱射病を疑い、
救急車を要請し、涼しいところに運び、速やかに身体冷却(頚、腋の下、脚の付け根など太い血管)を行います。
意識が正常な場合には涼しい場所に移し、衣服をゆるめて寝かせ、
スポーツドリンクなどで水分と塩分の補給を行います。
また、うちわなどで扇ぐのもよいでしょう。
吐き気などで水分が補給できない場合には、医療機関へ搬送し、点滴などの治療が必要です。
【スポーツ活動中の熱中症予防5カ条】
1、暑いとき、無理な運動は事故のもと
2、急な暑さに要注意
3、失われる水と塩分を取り戻そう
4、薄着スタイルで爽やかに
5、体調不良は事故のもと